「いずれは正社員になりたいけれど、いきなり応募するのは不安」
「派遣のようにまずは働いてみて、自分に合っているか確かめたい」
そんな声に応える雇用形態が紹介予定派遣です。
紹介予定派遣とは、一定期間派遣社員として働いたあと、派遣先企業と双方が合意すれば直接雇用へ切り替えられる制度です。
しかしその一方で、「通常の派遣と何が違うのか」「本当に正社員になれるのか」など、制度の中身を正しく理解している人は少なくありません。
本記事では、紹介予定派遣の仕組みや選考の流れ、メリット・デメリット、実際の利用時に注意すべきポイントまで徹底的に解説します。
制度の表面的な説明にとどまらず、就業後の展開やキャリア形成に与える影響なども紹介するので、ぜひご覧ください。
紹介予定派遣とは|その企業が自分に合っているか働きながらお試し!
紹介予定派遣は、「直接雇用されることを前提」に派遣として働き始める雇用形態です。
いきなり正社員になるのではなく、一定期間派遣社員として勤務したうえで、本人と企業の双方が合意すれば直接雇用に切り替わるという流れです。
- 派遣会社に登録し、
紹介予定派遣の求人に応募 - 書類選考や面接を経て、
派遣先企業に就業 - 最長6ヶ月間、派遣社員として勤務
- 派遣期間終了時に、
本人と企業双方の意思を確認 - 合意があれば、
正社員や契約社員として直接雇用へ切り替え
このように紹介予定派遣は、「いきなり入社するのは不安」「職場の雰囲気や業務内容を実際に知ってから決めたい」という方にとって、ミスマッチを防ぎやすい制度です。
まずは職場で働いてみてから入社を決められるため、自分に合った職場選びを重視したい人にとって有効な選択肢といえるでしょう。
「紹介予定派遣」と「派遣」の違いは?
紹介予定派遣と通常の派遣は、どちらも最初は派遣社員として勤務する点では共通しています。
しかし、その働く目的や採用・就業期間中の流れには明確な違いがあります。
紹介予定派遣 | 派遣 | |
---|---|---|
正社員登用 | 前提 | 可能性あり |
派遣期間 | 最長6ヶ月 | 最長3年 |
派遣先との 事前面接 ・書類選考 | 〇 | × |
契約期間中の 直接雇用 | 〇 | × |
紹介予定派遣は、「派遣先でそのまま正社員になりたい」という目的を持つ人にとって、有効な働き方です。
ここからは、上記の各違いについてより詳しく解説していきます。
正社員登用
- 紹介予定派遣
正社員 or 契約社員としての
直接雇用が前提 - 派遣
基本的に正社員登用はない
上記の通り、紹介予定派遣は派遣期間終了後に正社員または契約社員として派遣先企業で直接雇用されるのが前提。
一方で、通常の派遣は「派遣期間終了=雇用関係の終了」が前提です。
派遣先企業から声がかかり、直接雇用に切り替わるケースもありますが、制度として直接雇用を前提にしているわけではありません。
最終的に正社員雇用を目指す・予定がある方で、正社員登用の可能性も重視したい場合は紹介予定派遣の方が向いているでしょう。
派遣期間
紹介予定派遣と通常の派遣では、同じ職場で働ける期間の上限が異なります。
- 紹介予定派遣:最長6ヶ月
- 派遣:最長3年
これはそれぞれの働き方の目的が違うためで、制度上も明確に区別されています。
紹介予定派遣では、派遣期間は最長6か月までと法律で定められており、それ以降の延長はできません。
6ヶ月を下回る場合はありますが、どんなに長くても6ヶ月の派遣期間内で直接雇用への切り替えまたは辞退が義務付けられています。
一方、通常の派遣は同じ部署で最長3年まで勤務可能です。
3年を超える場合は部署を異動するか、派遣先企業での直接雇用、派遣先自体の変更をする必要があります。
紹介予定派遣は早期に雇用の可否を判断する制度、通常の派遣は柔軟な人材活用を目的とした制度であるため、このような違いが生まれています。
派遣先との事前面接・書類選考
- 紹介予定派遣:あり
- 派遣:なし(原則禁止)
通常の派遣では、派遣先企業が事前に面接や書類選考を行うことは原則禁止されています。
事前選考なしで希望条件に合う求人を探せるため一見楽ではありますが、派遣先企業の雰囲気などは実際に働いてからでないとわからないデメリットも。
一方で、同じ派遣でも紹介予定派遣の場合は将来的な直接雇用を見据えた制度であるため、以下のような選考プロセスが認められています。
- 履歴書、職務経歴書の提出
- 書類選考
- 派遣先企業による面接・適性検査
各種書類などの事前準備は大変ですが、就業前に双方のマッチングを図れるため、入社後のミスマッチや早期離職のリスクを減らせる点は大きなメリットです。
契約期間中の直接雇用
- 紹介予定派遣:OK
- 派遣:NG
通常の派遣では、派遣契約の途中での直接雇用は原則できません。
通常の派遣で派遣された就業先で直接雇用を希望する場合は、雇用期間の満了後に行う必要があり、対応の柔軟性に欠けます。
一方で紹介予定派遣の場合は、制度として直接雇用への移行を前提にしているため、契約途中での切替が法律上認められています。
そのため、「早めに正社員になってほしい」と企業側が判断した場合、当初の契約期間を待たずに直接雇用が行われるケースも。
このように、紹介予定派遣は「正社員になるまでのステップが制度として明確」であり、早期に安定した働き方を目指す人にも適した選択肢です。
紹介予定派遣のメリット5選
紹介予定派遣は、正社員登用を前提とした制度であるため、通常の派遣とは異なる多くのメリットがあります。
ここからは、紹介予定派遣で得られる代表的なメリットを5つ紹介します。
※以下の各行をクリックすると該当箇所に飛びます。
上記の中で気になるものから順にチェックしていきましょう。
職場の雰囲気・仕事内容を事前に知れる
紹介予定派遣を利用するうえで最大と言っても過言ではないメリットが、「職場の雰囲気・仕事内容を知ってから正社員になるかを決められる」ことでしょう。
これは、自身と就業先双方に対して入社後のミスマッチによる退職を防げる効果があります。
紹介予定派遣では、最長6ヶ月の派遣期間中に職場の働き方・社風・業務の難易度などをリアルに体感できます。
そのうえで「ここで長く働きたい」と納得してから直接雇用を決められるのは、大きなメリットの一つ。
また、業務内容だけでなく、上司や同僚との相性、人間関係の距離感なども実際の現場で把握できます。
正社員になる前から事前に人間関係の構築もでき、入社後0からのスタートにならないため、精神的負担もかなり軽減されるでしょう。
直接雇用前提で仕事を任せてもらえる
通常「派遣」とは、一時的な人員不足の解消を目的として雇用されるために、責任を伴うような大きな仕事には携わらせてもらえない場合がほとんどです。
しかし紹介予定派遣の場合は、そもそも正社員雇用を前提としている雇用形態のため、正社員とほぼ同等の業務を任せてもらえる機会が圧倒的に多いです。
このような環境は、単なる労働力として働く派遣とは異なり、働きながら自分の実力や適性を高める機会が得られるという点でも大きなメリットです。
職場に必要とされるスキルを実践的に学べるため、将来を見据えたキャリア形成にも直結します。
未経験の職種にもチャレンジ可!自分の適性を見極められる
紹介予定派遣は、「異業種に挑戦したい」「未経験だけどやってみたい」という人にとっても、柔軟で現実的な選択肢です。
いきなり正社員として応募するのはハードルが高いと感じる場合でも、紹介予定派遣なら実際に働きながら適性を判断できます。
通常の正社員採用では、応募段階から即戦力や実務経験が求められることが多く、未経験者には狭き門となりがちです。
しかし紹介予定派遣では、「まずは派遣として現場で試してみる」という段階を踏めるため、ハードルをぐっと下げた形で新しい職種にチャレンジできます。
業務のみならず、職場環境との相性まで実体験で判断できるので、入社後の後悔や早期退職のリスクも大きく減らせるでしょう。
未経験からでも着実にステップを踏みたい人、自分に合う仕事を見つけたい人にとって、紹介予定派遣は非常に心強い制度です。
派遣会社からのサポートで転職活動の効率が上がる
派遣会社に登録すると、派遣の種類に限らず希望の職種や給与、アクセスといった希望条件を事前に聞き、それらに添った職場を一緒に探してくれます。
- 希望職種
- 勤務地やアクセス
- 勤務時間・曜日
- 給与や福利厚生の希望
もちろん自身で探すのも可能ですが、一人の力のみで探すより圧倒的に効率が良くなるでしょう。
また、派遣会社の仲介により紹介される会社は、給与や福利厚生などの待遇面の開示がかなりしっかりしています。
派遣会社と就業先との信頼関係もあるため、「就職してみたら、求人情報や面接で聞いた話と違った…」といったリスクも防げるのはかなりのメリットです。
さらに、条件交渉などが必要な場合も派遣会社が行ってくれるので、自身に掛かる負担もかなり軽減できます。
紹介予定派遣は、自力での転職活動に不安がある人にとっても安心感の高い選択肢といえるでしょう。
直接雇用後は試用期間なしで就業開始
紹介予定派遣では、最長6ヶ月の派遣期間を通じての正規雇用であるため、試用期間を新たに設ける必要がなくそのまま就業を開始できます。
企業側にとっても働き手自身にとっても、十分な相互理解の上で入社初日から戦力として動けるかなり大きなメリットです。
内定後の不安が少なく、実務と心理面の両面で安心感があるのは、紹介予定派遣ならではの魅力と言えるでしょう。
紹介予定派遣のデメリット3選
紹介予定派遣には多くのメリットがある一方で、制度の特性上、事前に理解しておきたい注意点もいくつか存在します。
「正社員になれるかもしれない」という期待だけで進めてしまうと、思わぬギャップに戸惑う可能性もあります。
そこでここからは、紹介予定派遣を検討するうえで注意したい代表的な3つのデメリットを紹介します。
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上記を事前に確認してから、紹介予定派遣をより効果的に活用しましょう。
必ずしも正社員登用されるわけではない
紹介予定派遣は"直接雇用"を前提とした形態ではあるものの、企業側の業績や人員状況などの理由で契約社員での採用となる可能性もあります。
また、紹介予定派遣はあくまで企業側・求職者側ともに"双方の同意"がないと成立しないため、直接雇用自体がされない場合も。
ただし、万が一企業側の意向で不採用になった際は、希望すれば派遣先企業から不採用理由を明示してもらえる制度があります。
参照:第7 派遣先が講ずべき措置等|18 紹介予定派遣(2)
その後の転職活動の参考としても活用できるので、気になる方はぜひ利用してみましょう。
派遣期間中のみ正社員と待遇面に差がある場合がある
派遣社員は派遣会社側の福利厚生が適用されるのが基本ですが、紹介予定派遣の場合は派遣先企業、派遣会社どちらがのものが適用されるかは派遣会社により異なります。
もし派遣会社側の福利厚生が適用だった場合、正規雇用になるまでの派遣期間中のみ正社員との待遇差を感じる可能性があるでしょう。
- 交通費の支給条件や金額
- 社員割引や社内制度の利用制限
ただし上記の場合でも、派遣期間が終了すれば解決するため、あくまで「一時的な問題」の認識で問題ありません。
企業側の経営不振などで契約打ち切りの可能性あり
紹介予定派遣は直接雇用を前提とした制度ですが、企業の都合によって派遣契約が途中で打ち切られるケースもゼロではありません。
これはあくまで「予定」であり、確定した採用ではないため一定のリスクが存在します。
- 企業側の急な経営悪化や人員削減
- 採用予定ポジションの廃止
- 組織改編による採用計画の変更
- 求職者側との相性や評価の不一致
上記のような事情から、紹介予定派遣で働いていても派遣期間の途中や終了時点で契約を終了される可能性がある点は事前に理解しておきましょう。
特に景気や業績に左右されやすい職種では、企業の判断で採用計画自体が見直されるケースもあります。
頻繁に起こるものではありませんが、こういった万が一の場合もあると念頭に置いたうえで紹介予定派遣を利用しましょう。
紹介予定派遣で直接雇用を目指す攻略術
もし実際に紹介予定派遣を利用するとなれば、最終的に皆さんが目指したいのはやはり「直接雇用」ですよね。
ただし、それを叶えるにはまず面接の突破や派遣期間を経て企業からの評価も得なければなりません。
そこでここからは、以下の大きく2つに分けて紹介予定派遣の具体的な攻略方法を紹介します。
※以下の各行をクリックすると該当箇所に飛びます。
一見ハードルが高そうにも感じますが、「直接雇用」のゴールを確実にするためにしっかり事前対策をしていきましょう。
事前準備|履歴書・職務経歴書の作成、面接対策
紹介予定派遣の求人に応募する際には、書類選考や面接が行われます。
そのため、応募前の準備段階からの対策が直接雇用への第一歩になります。
基本的な準備の内容は、従来の就職活動と同じ要領で問題ありません。
まず、履歴書や職務経歴書などの応募書類は、内容の精度や見やすさが印象を大きく左右します。
正社員登用を前提に書類をチェックされるため、これまでの経験や人柄がわかりやすく・具体的に伝えられているかを意識しましょう。
次に、面接対策では特に以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- 自己PR
⇒これまでの経験+入社後どう活かすか - 企業研究
⇒業務内容・社風・ビジョンなどの把握 - 質問力
⇒逆質問で意欲や視野の広さをアピール
書類選考、面接を経て「この人を採用したい」と思わせられる要素を的確に届けられるように、準備を進めてみてください。
派遣期間中|業務のみならずコミュニケーションを積極的に!
紹介予定派遣の派遣期間は、「お試し期間」ではなく「実質的な選考期間」と考えるべきです。
企業側は、この期間中に「この人を正社員として迎え入れてよいかどうか」を見極めています。
- 与えられた業務・ノルマの達成
⇒達成できなかった場合は
課題抽出&改善 - 上司・同僚とのコミュニケーション
⇒信頼関係の構築はもちろん、
意見交換や報連相で自身の成長へ - 積極的にフィードバックを求める
⇒企業への適応と自身のスキルアップ - ポジティブな姿勢を心がける
⇒周囲も自分自身にも
良い影響を与えられる人材に!
与えられた業務・ノルマを達成するのはもちろん、企業側から「この人なら会社に貢献してくれる人材だな」といかに思わせるかが重要です。
紹介予定派遣に関するよくある質問
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紹介予定派遣でそもそも求人募集がない職種・業種はある?
「労働派遣法」により派遣という雇用形態での就業が禁止されている、「派遣禁止業務」と呼ばれる5種の業務があります。
引用:一般財団法人 日本人材派遣協会
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関連業務
- 「士」業務
弁護士、司法書士、建築士、社会保険労務士など
ただし、紹介予定派遣の場合は特例で医療関連業務のみ募集OKになります。
紹介予定派遣の仕事を自分から辞退できる?
派遣期間中に他の企業に同時に応募してもいいの?
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